いえ

 

 

物件は慎重に選ぼうねーーーーーー!!!!!

 


突発的に一人暮らしを始めてはや1ヶ月。

実家暮らしより面倒な事もあるが、住人との交流も上々で、まずますのシェアハウス生活を送っている。

 


じゃあなんで物件は慎重に決めろなどと失敗したかの様に話すのかと言うと

 

 

開くんですよねーーーーーー!

 


天袋が!!!!!!

 


何を言ってるかわからないと思うし、私もよくわからない。

 


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まず天袋って何かというと、画像のような和室の上部に取り付けられた小さい押し入れのような収納スペースなのだが

 

 


これが

 


開く

 


勝手に!!!!!!!!!!

 

 

 

入居2日目あたりから開くようになった。

 

は?そんなオプション要らんのだが?

 

いや普通の洋式のドアなら「風、カナ??」って思うんだけどね。天袋はさ、ドアじゃなくてね、襖なのよ。横にスライドする力がないと開かない訳。


しかも数センチならね?気のせいかなとか思うけど、違うのよ。ガッツリ開く。

 

端から端まで50センチくらい襖が動く。しかも開くだけじゃなくて閉まったりもする。

 


建て付けって訳でもなくね?

 


え、じゃあなんで開くの???

 


ここで一つ、確定演出をブッ込むと、この部屋告知事項アリだったんだよね。

 

 

それじゃね????????????

 

 

契約する時に告知事項について大家が話だそうとしたんだけど

「重大な欠陥とかでないなら話さないでください!」

って聞かなかったんだよね。なんかオカルトのバイアスがかかりそうで。

 


そしたらこのザマですよ。

 


思い込みだって信じたいけどよ〜

物理的に開くのはな〜

思い違いとか気にし過ぎの域をな〜

軽々超えてるからな〜

 

 

 

てか告知事項なんだったの???

 


気にならなね??????????

 

 

 

仲良くなった住人に、それとなく告知事項について聞いてみたら、会話のテンポが突然悪くなり、最後はなんとも微妙な空気になってしまった。

 


わかったことといえばみんなその告知事項について知ってるということ。

 


一人一部屋が割り振られていると言えど、暮らしているのは一つの建物なので全員に告知義務が発生するらしい。

 


無性に気になってきたので大家に改めて告知事項の内容を(クソ今更だが)聞いてみることにした。

 

 

 

 

 知らぬが仏


メールは1日後に帰ってきた。

“内容が込み入ってるため電話でお話ししたいです。”

文章を打つのが面倒なのか証拠を残したくないのか。

 


電話はメールより緊張するなと少し汗ばんだ手を乱暴にパジャマで拭き署名欄の番号に架ける。

 


1コール

2コール

3コール

 


......大家との通話時間は5分もなかったが、聞かない方が良い事というのは世の中あるという後悔と、通話後の余韻のせいで長い会話をした後のような疲労感だけが残った。

 

 

 

 

 ありふれてはいない不幸な話

 

「......最初、内覧で会った時から、違和感があったんだけどね。」

 

 

私の住むシェアハウスは女性専用なのだが、昔は即日入居も可だったため、いわゆる“訳アリ”の人が入居を希望してくる事もままあったそうだ。


そういった訳アリの人は、どうしても退去のペースが早かったり、他の住人とトラブルを起こす事もあり『そろそろ即日入居不可にしよう』と思っていた頃、私の部屋の前の住人はやってきたという。

 

 

「......こう言っちゃなんだけど、もしかしたら、ちょっと知的な障害とかもあったのかもしれないなぁ。」

 

 

ずっと笑顔でニコニコした人だったという。少し会話が噛み合わないところもあったが、頭金もあったことから、これが最後と決めて大家は契約を交わした。


しかし契約は初日に反故にされた。その女性は異様に少ない引越し荷物と一緒に赤ちゃんを連れてきたのだ。しかも産まれたての。


どんなに周囲に隠して連れ込んだとしても、泣かない赤ちゃんは居ない。引っ越したその晩にはその存在に皆気付いたという。

 

 

「赤ちゃんに気付いた住人から電話で苦情が来てね。すぐに飛んで行って彼女に話を聞いたよ。」

 

 

詳細な経緯はわからないが、彼女はいわゆる“野良妊婦”という状態だったようで、救急搬送され出産するまで、産婦人科の検診に行った事もなければ母子手帳も持って居なかったらしい。


出産後、退院しても行く先がなかったのだという。退院後にすぐ住める場所を探してここに辿り着いたのだという。

 

 

「本当はね、今すぐにでも出て行って欲しかったけど。行くアテがないって言うからさぁ。」

 

 

折衷案として頭金を返す代わりに2週間後には退去する事となった。


猶予を与えられた彼女は謝罪と感謝を述べながら。ずっとニコニコ笑っていたという。


最初は疎ましく思っていた住人達も、行くアテの無い彼女を哀れむ気持ちもあってか徐々に態度が軟化し、母子ともに受け入れてくれそうなNPO法人やボランティア団体を探したり、使えそうな毛布を差し入れする事もあったという。

 

 

「トラブルでスタートした割に上手くいってたから......その分衝撃は大きかったね。」

 

 

赤ちゃんが亡くなった。

 


入居から10日目くらいのことだった。

 


住人から連絡を受けた大家がシェアハウスに向かうと、彼女は既に取り調べのため警察署へ向かった後だったという。

 

 

「眠ったまま、突然死んでしまったらしいんだ。」

 

 

死亡した人の年齢に限らず、不審死の場合は警察がやって来て現場検証を行い、必要に応じて事情聴取を行う。

 

この時は出産や入居の事情が事情なだけに、虐待や無理心中も疑われ大家や住人までも事情聴取を受けたが、検死の結果、死因は“乳児突然死症候群”と判断された。


乳児突然死症候群は世界中の一歳以下の乳幼児に稀に起こる原因不明の突然死だ。


発症に至るプロセスの仮説やある程度の対策は講じられているものの、完全に防ぐ方法や明確な原因は今現在もわかっていない病。

ランダムに起こる不幸としか言いようがない。

 

 

「一人になってしまったし、家賃も数ヶ月免除するからここに残れば?って、提案したんだけどね。」

 


彼女は小さな骨壷と少ない荷物を片手にシェアハウスを出て行ったという。

 

 


 好奇心は猫をも殺す


そんな事ってあるかよ、と思いながらぼんやりと物干し台から夕日が沈むのを見る。

 


この世に悲しみ数多あれど、親が子を失う悲しみは一入ではないだろうか。

 


むかし病院で偶々子どもの臨終を見かけた事があったが、あの時聞いた親の叫びは他人の私の心すら刺した。今でも耳から離れない。

 


子を持たない私にとって、我が子を失う悲しみは計り知れない。

 


しかしどんなに悼んだって過去は変わらない。この部屋で起こった事は変えられない。

 


好奇心が生んだ後味の悪さを噛み締めながら部屋に戻ると、また天袋の襖が動いていた。

 


しかし普段の開き方と違う。

 


いつもより確実にゆっくりと開いていく。

 


心拍数が一気に上がるのと同時に身体のどこも動かせなくなる。

 


スルスルと小さく音をたてながら、ゆっくり、ゆっくりと天袋が開いていく。

 


身体が硬直し息が浅くなる。

 

 

 

 


直感でわかる。何かが出てくる。

 

 

 

 


いつもはただ開いたり閉まったりするだけの天袋から、何かが出てくる。絶対に。

 


頭の芯が恐怖じわりと麻痺して身体を動かす事が出来ない。今この瞬間を認知し続ける事しか出来ない。

 


せめて目だけでも閉じたいのにそれすら出来ない。金縛りにあったように指一つ、瞼一つ動かせない。

 


天袋の半分が開き、カツンと襖が床柱に当たる。

 


スルスルと襖が開く時と同じ音を立てながらそれが出て来る。

 


女だ。

 


女はゆっくりと天袋から身を乗り出す。

おどろおどろしく呻きながら這い出るのではなく、襖を開け閉めする時のスルスルという音を立てながらゆっくりと滑り出てくる。

 


最悪、最悪、最悪。私が何をした?何もしてないだろう。それが嫌なのか?何もしない私が許せないのか?でも仕方ないじゃないかどうしようもないじゃないか誰か助けてごめんなさい。

 


突然女が顔をバッとあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その女は、私の母の顔をしていた。

 

 

 


悪夢で飛び起きたのはいつぶりだっただろうか。


寝起きだが心臓はドクドクと脈打ち高熱を出した時のような寝汗をぐっしょりとかいていた。


「怖かった。」


あまりの鮮烈な悪夢に思わず独り言が溢れ出る。


「怖い、怖かった、マジで、怖すぎた、無理......」


あえて声に出すことで現実を噛み締める。今になって涙が薄っすら浮かんでくる。


普段は日焼けを気にして締め切っている遮光カーテンを開く。薄曇りのせいで陽射が弱い。


それでも充分だった。あの悪夢を思えば、例え弱々しくとも太陽の光がひたすらにありがたかった。


母に電話しようかと思いiPhoneに手を伸ばすが、直前にみた悪夢が脳裏にチラつき怖くなりやめた。本当に胸糞の悪い夢をみた。

 

 

 

夢の中の、母の顔をした女はニコニコ笑っていた。

 

 

 

 


......なんて事がここ数日間で起きたから文章にまとめたけど、まぁ所詮はブログだから。


もちろん脚色もかなりあるし、プライバシーのために改変したところもあるから。創作作品、フィクションだと思って欲しい。


私に文才が無いのも相まって、ホラーとしてらパンチ力のない内容だっただろう。

 

中途半端過ぎてホラー好きからは石を投げられそうだ。


だからそんなに構えず、なんなら「つまんねー話で脅かすなよ」と言って笑って欲しい。

 

 

 

私の部屋で過去死人が出たのは本当だし、それが不幸な出来事だったのも本当。


このブログでは書かなかったけど、女の咽び泣く声や不審な足音を聞いたのも本当。


住み始めた時から違和感を抱いたのも本当だし、悪夢を見たのも本当。


天袋が開くのも本当。

 

 

 


それでも、いやだからこそ、そんなの大丈夫だって慰めてくれ。

気のせいだよって笑い飛ばしてくれよ。

 

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