私は世界中の神様を信じている。
正確に言うと「信じる時もある」。
私の懺悔室は大体トイレだ。
今日も神様に祈りを捧げた。
頭が痛い時は横になって目を瞑るだけなのに、お腹が痛い時はトイレで手を握り世界中の神様に祈りと懺悔をはじめてしまうのは何故だろう。
神様仏様イエス様。アッラーにシヴァ、ゼウスお願いです。明日から清く正しく美しく生きるので、どうかこのお腹を鎮めて下さい。
頭の中でグルグルとマニ車を廻しながら、白い小さな匣の中、陶器の椅子に座り祈る。
きっと世界のどこかに同じ様な不遜な教徒が居ると思いながら。
より良く生きたいけれど、あんまり努力はしたくない。そんな事を考えながら食べるランチのポキ丼は美味しい。
成長が生きる糧になる、夏の日に向かって咲くひまわりの様な人も居るだろう。
しかし生憎私は紫外線過敏症なので湿った穏やかな土地で苔のようにひっそりと生きたい。出来る事なら名人の盆栽の土の上で甘く柔らかな水を浴びながら生きたい。
ふと窓に目をやると、向かいの工事現場でクレーンがゆるりゆるりと鉄骨を運んでいる。キリンの親子が草を食む姿を彷彿とさせる風景に少し笑う。
こういう幸せを抱きしめる喜びを忘れてはいけないと思いながら会計を済ます。
「1080円です。」
あの日釣ったザリガニにも母はいたのだろうか。だとしたら、昨日はどんなカーネーションを贈ったのだろうか。
そう思いながら食べるハイチュウにはグミが入っていた。
「これ、ぷっちょだわ。」
瑣末な差でも、大切にしていきたい。ハイチュウもぷっちょもキャラメルもボンタンアメも、一括りにされたら嫌だろう。
私だって一緒にされたくない人がいる。宇宙人規模でみたら、浜辺の砂粒以下の存在の私でも、譲れない個がある。
大切にしたい心掛けがある。飽きる事なく反芻する。
早寝早起き 無理をせず 美しいモノを見て モルモットを愛し インコと語る 美味しいものを食べ 魔法を信じ 風呂を愛して 柔らかい場所で眠る そして......