この世には信じられないくらい苦しいことが、数え切れない程ある。
人にとってはバカバカしくちっぽけな不幸も、本人にとっては世界が割れそうな程辛い事だったりもする。
息を、吸う。吐く。
この小さな永遠の営みが、痛く永く続くように感じる夜がある。
そんな時、拠り所を求めるのは人間の性なのだろうか。
苦しい時、ひとりの人に縋ると大抵揃って仲良く沼に沈む。大体において、人は人を救えやしない。
溺れ、もがき、相手に爪を立てるせいで互いに傷だらけになる。苦しいと水面に顔を出そうとすると、自然と相手を下敷にしてしまう。
だからこそ、救われる為には多くの人間に助けをもらわなければいけないのだが、人に共有出来るような苦悶ならそもそも苦労はしない。
誰自分を理解し助けてくれる人なんていやしないのだと絶望しながらも、無意識に両手は重なる。
祈らずにはいられない。
何に。
なにか漠然とした偉大で身近な何か。
宗教の様に儀式的且つカルトチックな存在ではなく、もっと気軽で大事なおまじないのような。何か。
それはふわふわで温かいといい。