突然だが、私はショートカットにするといつも麗子像になる。
麗子像を知らない人はググって欲しい。とにかくショートカットにすると硬い黒髪のせいで海苔みたいになるのがマイヘアーの欠点である。
パーマをかけてもグリングリンになり、今流行りのエアリーで透け感のある髪型にはならず、寝坊したサザエさんみたいになる。
しかも惰性でロングにすると、硬い直毛がシャーンと伸びてなんか知らんがメンヘラっぽい感じになり一人オタサーの姫状態になる。そんなお一人様嫌すぎるだろ。
この運命に抗いたいと思っていたある日、ひょんなことから髪型も顔も可愛い友達2人が「シマ」に行ってる事を知った。
シマ?????ナワバリの事?????
「よくわからないがこれは私も便乗してシマに行ったら可愛くなれるのでは?????」
とIQ控えめの思考回路で話をよく聞いてみると、シマというのは正式名称「SHIMA」という原宿や青山、代官山、銀座、吉祥寺に店舗を構えるモデルや女優さん御用達の正真正銘オシャレ美容院の事だった。
というわけで、足立区に住む私は東京の極東からえっちらおっちら電車を乗り継ぎ銀座まで行って髪を切ってもらいに行った。
ちなみにシマは銀座だけで3店舗もある。
おい、ミニストップ聞いてるか?見習えよお前。
死ぬほど医薬品を買い込んだ中国人と歩行者天国でぶつかりそうになりながらも目的のビルまでたどり着き、ドキドキしながら店内に入るとこれまで行ってきた美容院と全く違う景色が広がっていた。
みんなクッソオシャレ。
素敵有閑マダムもいれば、清楚系美人もいるし、韓流系の女の子もいる。スタッフも色々で、派手髪を外ハネさせたキュートな人から落ち着いたアッシュグレーの髪を緩く巻きアンニュイな雰囲気の人まで。少なくとも麗子像はいなかった。
内心「(ヤバみ)」と思いつつ受付を済ますと「こんにちは」と竹内涼真似のカリスマ美容師が微笑みかけてきた。
ドギマギしながら「お、お疲れ様です」と謎の労いをしつつ話を聴くとどうやらこの竹内涼真が今日の担当だという。
え?カリスマオプション料金プラス数万円かかりません????大丈夫?????アコムとかレイク近くにある?????
死ぬ程テンパるも、カリスマの優しい誘導でカットのイメージを伝える。
「か、髪を切りたくて。ボブより短めで、アゴより少し上に毛先がくる感じ。スクエアボブというより丸いイメージで、前髪もシースルーでうんと軽くして下さい。」
欲深い女なので緊張してる割にアレコレ注文の多い私。そんな私の話をカリスマはウンウンと聞いてくれる。相づちが眩しい。
カリスマ「今の髪型もお似合いですけど、バッサリ切る感じですね。」
ほらーーーーーーもーーーーーーさらっと褒めるからーーーーーー????????
と私の中のイマジナリーおばさんが照れる中、カット後のトリートメントの話をしだすカリスマ。
キューティクルをペンで図を描きながら説明してくれるも、それが絶妙に下手で髪の断面図が最終的にウニみたいになっててじわじわくる。
※どうやら髪の毛内部まで浸透するトリートメントとういうことを伝えたかったらしい。
死んだ細胞である髪の毛にどこまでアプローチできるのか謎ではあるが、美容は科学と祈りとプラシーボで出来ていると私は考えてるので、数種類あるトリートメントの中でも割と良いレベルのトリートメントをお願いした。
最後に髪質を見るために、髪の毛を手で優しくすくカリスマ。
「ここ...!!!少女漫画で出てきたところだ!!!!」と進研ゼミの広告漫画みたいになっているとカリスマがニコッと笑い
「絶対可愛くするんで!」
と言ってきた。
え???マジ???すごくない???そんな爽やかに自信持って言われたら全部任せちゃうじゃん???髪の毛のこと全部委託しちゃうじゃん????
はぇ〜(眼球反復横跳)となりながらも「ありがとうございます!」ってちゃんと日本語で返せた私偉い。
シマのシャンプースペースは軽く仕切られてたんだがそこがまたすごい。まず暗い。とんでもなく暗い。映画でも上映してんの?ってくらい暗い。
そんでもってショッキングピンクの馬鹿でかいネオンサインがドンと貼られている。すごい。ハリウッドのバーかよ。
しかもそのネオンサインをよく見ると「Hello Gorgeous」と書かれている。頭の中で海賊船長系芸人が地球儀を回し出す。ヤバイ。マジヤバい。マダガスカル。
24年間生きてきた経験則から脳が「ここぜってー髪洗うとこじゃねーから」というツッコミをやめない中、顔にガーゼをのせてもらうも、ピンクのネオンサインがバチバチに透けて見えたので私はそっと目を閉じた。
優しくシャンプーしてもらったのだが、シャンプーもすごい。
美容院のシャンプーというのはまぁどこでやってもそれなりに気持ちいいものだが、シマはレベルが違った。もうとろける。
丁度いい力加減とお湯の温かさが最高だし、指の圧が絶妙で、ガチで頭皮が喜んでるのがわかったし、最高過ぎたので3時間くらいそのまま洗い続けてほしかった。
シャンプーを終えるとさっきのカリスマが来てくれたのだが、やっぱりイケメン。というかオーラがある。周りのスタッフとも仲よさそうなのだが、ちゃんと尊敬されてるのが私にも伝わる(後で知ったのだが、実はこのカリスマは店長だった)。
はーこれがオシャレ美容院シマの実力......!!!!!
オーラがあるのに威圧的ではなく、気さくなのだが説明が丁寧。そしてベラベラ喋らない。という私的に最適な距離感だった。
しかもその眼差しが真剣なのだ。もう髪しか見てない。ミリ単位で考えてくれてるのがわかる。感動&ありがたさの極み。
時々いない???よそ見しながらブローしてる奴。「いやいろんな客をスタッフ達で回さなきゃいけないのはわかるけど、そんなキョロキョロすんなよ。PDSDの米兵かよ。夜襲きてねぇから。」みたいな美容師。
オーラの塊魂みたいな人に見つめられたら緊張するがな!!!!と最初はびびってしまい、それを悟られまいと髪避けポンチョの下でラーメン屋のオヤジみたいに腕を組んでいたのだが、あくまでカリスマが見てるのは髪であり私ではないと気づいてからはヘラヘラと普段は読まないファッション雑誌を読んでいた。
そんでもってアホ高いトリートメントをしてもらったのだが、これもめちゃくちゃ丁寧にしてくれる。これからカラーリングでもすんのかってレベルでクシを使いながらムラなく髪一本いっぽんに浸透させてくれるので、なんだがドカッと椅子に座ってるだけなのが申し訳なくなるレベルだった。マジサンキューな。
そして最後に鬼門、前髪を切ってもらった。
女子ならわかると思うが、前髪ってクソ難しい。
前髪を長く伸ばして横に流したりかき上げスタイルにしてればさほど難しくはないが、前髪をおろしてるスタイルだとミリ単位の長さで全てが終わることすらある。
前髪がダメだともうその日がダメ。全てダメ。あーもー前髪終わった全部おしまいもう帰ってイイっすか?(笑)みたいになる。
しかしカリスマの技術はすごい。私が自分で切ったテキトーなぱっつん前髪をシャシャシャシャと切り揃えオシャなシースルーバングに変えていく。マジ天才のソレ。
そして最後にヘアアイロンとブローで軽いカールをかけていく。
ショートでカールなんて私がしたら泉ピン子みたいになってしまいません?と思ったが、流石は似合わせカットのカリスマ店長。語彙力が追っつかないがとにかくすごいいい感じになっていく。
その間カリスマは「すごいかわいい」「似合ってる」と言い、周りのスタッフさんも「ほんとお似合いですよ!」「いいな羨ましいくらいステキ!」等あらゆる言葉で褒めてくる。何もしてないのにこんなに褒められるのは新生児の時以来でうっかり泣きそうになる。おんぎゃあ。
最後、仕上げの確認用の鏡に写っていたのは「オイオイこのまま王様のブランチの収録行けちゃうんじゃねーの?」というようなオシャレ感たっぷりの私だった。
オイオイオイ誰だよコレwwwwwとニヤケ顔が止まらない中でのお会計。こんな最高の仕上がり10万くらいするんじゃねーの?と思ったらなんと1万ちょっとだった。は?安くね???いや安くはないけど???ホットペッパービューティーマジありがとうな???
ルンルンで早速家族に新しい見せたら
「仕事できる人に見える」
と仕事ができない奴前提のほめられ方をされた。マジやめろ。