OL旅行記(散文ともいう)

OLが行く!湯けむり慰安バスツアー!


品に欠ける電車の中吊り広告の様な出だしになってしまったが、文字通り、この土日は会社の仲良しの同期と温泉バスツアーに行って来た。


私は、旅行はどこに行くかという事よりも誰と行くかが重要だという考えのため、行き先は友人に任せ、ギリギリまでどこの温泉に行くかチェックしておらず3日前あたりにようやく栃木の日光・鬼怒川温泉に行く事を知った。

 

どこの温泉に行くのかと親に聞かれ「きどがわ温泉」と返し怒られたのは内緒だ。


幼い頃から重度の花粉症のため、日光の杉山を恐れ、アナフィラキシー覚悟で臨んだ旅行だったが、万全を期したからか然程影響はなかった(友人は一度瀕死になった)。




余談だが。


花粉症の薬は大きく分けて2種類ある。抗アレルギー薬と抗ヒスタミン薬だ。


前者の薬は病院でしか貰うことが出来ない。手間だが、抗アレルギー薬は花粉飛散の1ヶ月程前から飲む事で大きな効果を得る事ができ、且つ保健が効くので非常におすすめだ。

手軽にドラッグストアなどで手に入る後者の抗ヒスタミン薬だが、副作用として眠気と喉の乾きがあり、また飛散量の多い地域に行くと症状を抑えきれなくなる為注意が必要となる。




突然語りだして申し訳ない。花粉症についてアウトプットする機会に中々恵まれない為ついこの場を借りてしまった。


話を戻すが、栃木は東京に比べるとまだ寒いが、春の訪れはそこかしこに現れていた。


都会ではあまり見かけないつくしが生えているのを見つけた時は結構興奮したが、皆はあまり興味無いだろうと思い、ひとり万年筆のようなフォルムをまじまじと観察したりした。


ツアーの為、日光東照宮やスイーツ食べ放題店、おかき工房など、色々な場所をバスで巡っていった後(イタリアのパックツアーを思い出した)、宿泊する温泉旅館で降ろしてもらった。




温泉は、良い。




人によってはデカイ湯船くらいの認識かもしれないが、プラシーボ効果を差し引いたとしてもやはり疲れが溶け出して行く様な気がしてならない。


うぅ、だとか、あぁ、だとか言いながら熱い湯に浸かり、頭にタオルを乗せサイコーだねと顔を見合わせた瞬間、OLになった事を実感する。


大人になれた。なってしまった。


 


早めの夕食を済ませ二度目の入浴を済ませた後、部屋へ戻ると布団が敷かれていた。上げ膳下げ膳至れり尽くせり、旅館の醍醐味である。


布団を見た瞬間、電気も付けずに自己主張の激しい性格の人から順に(私は2番目だった)目ざとく各々気に入った布団へダイブしたが、それでは不公平だという事になり結局ジャンケンで場所を決めた。


そこでとりとめのない話をぽつぽつとした。

具体的に何を話したか、もう思い出せない程なんて事のない会話だったのだが、その時間が一番フラットな自分で居る事ができた気がする。


ふと、スマホに着信が入っている事に気付く。折り返すと、母からの祖父が倒れたとの連絡だった。

祖母が亡くなり早8年、やや不謹慎だが、祖父もよく生きてきたよな。と思いながら翌日早朝東京に向かう事を約束し切電。


皆にその旨を伝えると、私以上に祖父を心配をしてくれ、先に帰る身勝手さを責められる事はなかった。


その後、畳の上で円になり座っていた事や部屋の雰囲気も相まって、段々レクレーション的なゲームをしたくなり、急遽人狼の親戚の様なゲームのアプリを入れ(こういう時にスマホの便利さに改めて気付かされる)深夜1時までゲームで盛り上がり、その後誰ともなく布団へ滑り込み電池が切れた様に眠りについた。




仕事の夢を見た。

もう詳しくは思い出せないが、私は仕事に必要な承認を貰おうとするのだが誰も応えてくれずフロアをウロウロしていた。すごく心細かったのは鮮明に覚えている。


困り果てた時、デスクの上の私の携帯が震えた。昔使っていたピンクのガラケーからperfumeのlovefoolが流れる。なんの違和感も躊躇もなく(夢の中だから)出ると、同期の友人からだった。


「どうしたの?」


あのね、と言い出した瞬間、誰かのアラーム音で目が覚めた。


ぼんやりとした意識の中「後5分寝ます......」と言ってもう一度目を瞑る。


結局15分追加で眠った。




朝食と身支度を済ませ、バスツアーの続きに向かう同期と旅館の入り口で別れる。


「次会うときは2年目だ。」


内定者時代に出会い、辛酸を共にした皆と共に新人を終える事に喜びと一抹の寂しさを覚えながら手を振った。




乗車券と特急券の認識がごっちゃになりながらもどうにか切符を買い、一人スペーシアに乗り込みイヤホンを耳にはめる。


東京に居る時はハイテンポなシティポップを好んでいるが、こういう時に聞く音楽はスローテンポな昔のヒット曲に限る。


車窓からは山や田畑、民家。ぽつぽつと梅も見える。なんと穏やかな春の風景だろう。

いっそCarpentersのTop of the worldくらいカントリーな曲でもいいかもしれない。


車内販売で買った220円のアイスコーヒーのプラスチックカップと窓ごしに流れる景色をぼんやりと眺める。


春の陽気で生まれた氷まわりの結露がキラキラと外の菜の花畑を反射している。


ふと夢に出てきたガラケーと同じ様な色の車が目に入った。

珍しい色だと思いよく見てみると、運転席からチラリと女性の和服の袖が見えた。


それだけの事なのだが、胸がグッと熱くなる。

自分とは全く異なる他者の営みを垣間見るというのも、旅行の良さの一つなのかもしれない。


祖父は今どうしてるだろうか。

悠長にまばたきをしながら、春の日差しに照らされた病院の白い壁を思い浮かべていると、次は北千住とのアナウンスが流れ出した。